今さら昨年のベスト映画を語る

以前は本を読んだり音楽を聴いたりすることを趣味としていたのだけど、飲食業を始めてからは、本を読むエネルギーや時間を作れなくなってしまい、


 

 

 

 

 

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  以前は本を読んだり音楽を聴いたりすることを趣味としていたのだけど、飲食業を始めてからは、本を読むエネルギーや時間を作れなくなってしまい、今では料理の専門書や雑誌に目を通すほどしか活字を読まなくなって久しい。音楽に関しては新しく出てくるアーティストや、以前から聴いていたアーティストの新譜を追いかけていたかつての情熱が完全に枯渇し、懐メロを聴くように10代の頃よく聴いた曲たちを申し訳程度に聴くにとどまっている昨今である。
 
 拘束時間の長い飲食業を生業とするうえで、仕事とは異なる、別のチャンネルとでも言うのか、とにかく没頭することができる何か違うものを持つという事は、四六時中料理のことを考えているよりもむしろ効率的に働くことができる実感もあり、また、長くこの仕事を続けていくうえでの必要も感じ、3年ほど前、『サクラ』に入社したときから、意識的に趣味を作ることを考え、映画を趣味とすることにした。映画を趣味とするといっても、映画館に行くような時間もないので、『TSUTAYA』でDVDを借りてきては夜な夜な眠る前に少しずつ観賞する程度というこの姿勢は、映画ファンとしては失格と言って良いだろうと思うのだけど…。
  
 そういうわけで、新作映画はほとんど観ることはないものの、昨年180本観た映画の中から2017年公開の映画で最も印象に残った映画を、まったく今さらではあるが1本挙げておこうと思う。年明けから4カ月も過ぎて2018年のアカデミー賞まで発表された後に、昨年の映画評なんかやっている奴は、本当に貴重な存在なので、温かい目で見守ってあげた方がいいぜ!
 
さて、そういうわけで、昨年の僕の個人的ベストは『アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場』というイギリス映画で、ケニアにおける過激派アラビア勢力とのドローン戦争を題材にしている映画なのだけど、僕が知る限り、この作品を昨年の映画ランキングの上位に挙げている人はまずいない。
 
アイ・インザ・スカイ.jpg


 
 確かに昨年は映画業界全体が豊作の年で、アカデミー賞で騒がれた『ラ・ラ・ランド』も『ムーンライト』も素晴らしかったし(この前『シェイプ・オブ・ウォーター』が今年の作品賞を獲ったことはもちろん存じておりますよ)、メル・ギブソンとポール・ヴァ―ホーベンの新作『ハクソー・リッジ』も『エルELLE』も凄まじかった。『アシュラ』『お嬢さん』『哭声コクソン』という怒涛の韓国映画ラッシュもやばかったし、まだ観れていないけどジム・ジャームッシュの『パターソン』も評判が高い。
 
他にも挙げればキリがないけど、いずれにせよ先に挙げた『アイ・イン・ザ・スカイ』はこれらの映画に比べれば、間違いなく見劣りするといっていい。ヘレン・ミレンこそ出ているものの、他にスター俳優は見当たらないし、同時期に公開されたイーサン・ホーク主演の『ドローン・オブ・ウォー』と題材もかぶっているし、そもそも戦争映画における『究極の選択もの』というジャンルでは、過去に『アメリカン・スナイパー』なり『ローン・サバイバー』なり『ゼロ・ダーク・サーティ』なりの傑作の中で、すでに語られ尽くしているという印象もある。
 
 それでもこの映画が良かったのは、戦争という、そもそもの根本が間違っていることを進行していくうえで、100%の正義ではない、よりマシな悪(アメリカではこの正義の概念を『レッサー・イーヴィル』と呼ぶ)を、その場その場で、不毛とも思える形だけの手続きを取りながら判断し、決定していくというこの姿勢が、自分とは関係のない遠い世界のテーマではなく、我々の日々の生活とシンクロし、非常に考えさせられたからだ。
 
 この不完全な矛盾を抱えた仕組みの中で、合ってるのか間違ってるのか分からないものを目指し、雁首揃えて悩みながら、よりマシだと思えるものを選んで、上役からの許可を形だけでももらい、物事を進めていくという自分の日々の生活と照らし合わさずにはいられなかったのである。この映画は、こうした不毛にも思える日々を送ることに(テーマとしては反戦映画の色が強いこの映画の内容からするとかなり不謹慎ではあるが)勇気を与えてくれた。
  
 映画自体も小品でありながらクオリティは高い。
最も秀逸に感じたのは、戦地となっている無人偵察機からの映像を会議室からただ見守るしかない軍人たちや高官の映像が、映画というメディアの性質上ただ観ていることしかできない我々観客と同じで、いわばメタ的な構造になっていて非常に没入感があったこと。ラストのセリフで登場人物の一人が「よく頑張ったな。家に帰ってゆっくり休め」と上官から言われるシーンなどは、緊張感を抱きながら見守るしかなかった我々観客に向けられた言葉のように感じた。
冒頭の少女の自宅でのシーンから、カメラが家の外に移っていき、街の情景を映していくくだりだけで、セリフなしで舞台説明が一瞬で行われるという手際の良さにも感心したが、軒並み美しい夜のシーンなどを筆頭に随所に見られるグラフィカルな画面も印象的で、特に中盤に挟み込まれる少女のフラフープシーンの美しさが、映画全体の殺伐とした空気の中で、アクセントとしてかなり効果的に働いている点も感心する。
逃走劇やスパイ映画のような場面も盛り込まれていてサービスが効いているし、これは個人的な好みの問題だけど、映画内の時間経過が少ない映画が大好物である僕としては、ある1日の作戦の話、というのも好感が持てた。映画自体が90分程度のタイトさだったことも非常に良い。短いのが一番良い。
構成としては、『シン・ゴジラ』の前半部の会議シーンが90分間続くようなつくりになっているので、『シン・ゴジラ』好きの方にもおすすめできるかと思う。
 
ちなみに一昨年2016年の僕のベストは『マネー・ショート 華麗なる大逆転』というサブ・プライム・ローンやリーマン・ショックを描いた映画で、これもまたあまり語られることのない映画だけど、覆すことのできない大きな仕組みやシステムの中で、結果としてはやっていることは皆同じなのだけど、どのようなスタンスで生きるべきなのかということを非常に深く考えさせられた映画であり、『アイ・イン・ザ・スカイ』ともどこか通ずるところがあるように思う。
 
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一昨年、昨年のベストが、僕が常々公言している、個人的に大好きな2大ジャンルである『友情崩壊もの』でも『10代の頃の呪いにとらわれた大人たちの話』でもなかったことに自分でも驚いていて、映画として面白いということはもちろんだが、こういう実人生にフィードバックできる映画を観ると深く突き刺さるといことを実感した。
来年こそはリアルタイムで2018年ベストを報告したい。そして、映画館へ映画を見に行きたい!

 

 

SAKURA シェフ 石橋
 


 

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